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  • 執筆者の写真プラナビ編集部

【明野設計室】建築家・明野岳司さん、明野美佐子さん


明野設計室さん 親子オープンハウスに行ってきました



カーデガンのような家。



明野設計室さんからそんな一文が記されたオープンハウスのお知らせが届いたのは、2020年 1月の中頃のことです。



ふと訪れたこのお知らせに、はじめて明野設計室さんの事務所を訪れたときの記憶がよみがえります。明野岳司さんと明野美佐子さん、ご夫婦お2人の建築家。


半年前のまだ暑い夏の盛り。ご自宅を仕事場にされていることもあるのでしょうか。


覚えているのは、ひみつの隠れ家にいるようなよい居心地だったこと。お庭の緑や、木製家具の調和した応接室、ところどころに差し色を効かせるセンスのよいインテリア、やわらかい間接照明。何より、外はジリジリと焼け付くほどの晴天なのに、明野さんの事務所には木陰にいるような涼しさと凜とした空気が同居していました。思わず玄関をあがるとき、失礼しますではなく「おじゃまします」と言った記憶があります。私の脳は瞬間的に「家」と認識したのか。オフィスを訪問する意識でいたなら、でない言葉でした。




仕事柄、数々の建築家さまにお会いさせていただく機会があります。それぞれに皆さんお優しく、個性とセンスをお持ちの方ばかりです。その色様々に、お施主様との相性があり、誰が一番ということはございませんが、私自身は明野さんご夫妻とご縁のあったお施主様方を心ひそかに羨ましく思っています。そして同時に、明野さんにお家をつくってもらいたいと思った方々は、きっと心のあたたかい人たちであろうことも容易に想像がつくのです。


たった一度の訪問で何がわかる、とのお声が聞こえてきそうですが、人と人との印象とはそういうものではないでしょうか。たった一時間と少し。その時間があれば明野さんご夫妻の持つ、囲炉裏の火にあたるようなあったかさを感じとるには十分でした。お話していると、やわらかい熱がゆっくり時間をかけて、じんわりと体の芯にしみてくるのです。つくりものの社交辞令や優しさではなく、痛いお腹にそっと手のひらの熱を分けてくれるような、まさに手当ての心遣い。



私は家こそ建てたことがありませんが、なにか些細なことでも相談してみようかな、相談しても大丈夫だよね。そう思ってお施主様が明野さんを頼りにする気持ちがとてもよくわかります。現実に、なんの得にも利益にもならない私自身の仕事のご相談も、無知と笑わず、煩わしいと避けることをせず、本当にまっすぐ受け止めて同じに悩みお返事を返してくれるのです。




打ち合わせのテーブルを挟み、向かい合わせに話しているのに。


遠く離れたメールでやりとりしているのに。


いつのまにか、3人掛けのベンチで肩を触れあわせて話しているように思える。


それが、わたしの感じた明野さんご夫妻の姿です。




回想がすぎましたが、とにもかくにも久方ぶりに、明野さんたちのふうわりとした空気に元気をもらいたい、そしてとてつもなく言葉のセンスを感じる「カーデガンのような家」をみてみたくて、お誘いに参加をしたのが1月最後の土曜日のことでした。




たくさんの人たちが集まっていたオープンハウス当日。


親子二世代にわたるお家ということで、一軒はもうすでに何年も暮らしているお家も見せていただけるという貴重な機会。すでにお住まいのご夫婦がいらっしゃると伺っていた私は、日頃の感謝とご訪問のご挨拶に、すこしばかり早い春をと、ミモザのブーケを2つ持参することにしました。到着すると周囲は男性ばかり。会話の様子から皆さん建築関係の方のようでした。



まずは完成直後のお家から、自由にぐるぐる見て回れるスタイル。玄関をあがるとお写真を撮っているカメラマンさんがいらっしゃったので、ちょっと遠慮がちに通ろうと思った私を察してか、すぐにカメラの三脚ごとどかして、ゆっくりみていってくださいよ!と声をかけてくれたことにまた感動。やっぱり明野設計室さんと一緒に仕事をする人たちってワンチームなんだなと、家づくりへのソウルを感じました。



専門的な知識のない私は、ひとりお施主様気分で、ひろい窓や扇状のダイニングテーブル、蜂の巣みたいな鏡や独特な屋根の形状を楽しみ、祖父母の代のものをどうにか残したかったという立派な柱の説明書きを何度も読みかえします。






いつも見るたびすごいなぁと感動を覚えるのが、明野さんのお色合わせのセンスの良さ。絶妙なニュアンスの白やグレイやネイビーに、目の覚めるような黄色の小物やブリキの質感。惚れ惚れするほど可愛らしいのです。高いもの、質のよいもの、チープなもの、ユーモアのあるもの。それぞれの良さを融合させる魔法が使えるに違いありません。



「スープの冷めない距離」ほど近い2軒目のご両親のお家にお邪魔する頃には、やっぱりお家の中もお施主様の好みも知らないのに、このお花は余計だったかもしれない。と左手にブーケを隠した紙袋の持ち手を握りしめ、ひとり悩むくらい、そのお家は素敵でした。


「主人はテーブルが好きで、私はイスが好きで、いつのまにかこんなに(笑)」


雑貨も好きで、自分で雑貨屋さんをやりたいくらいと話すお施主様のご趣味で、家のあちこちに飾られた雑貨のセンスのよいこと。そんな沢山の家具に囲まれながらも、のびのびとした開放感が失われていないことにも驚きました。



お家をあとにするとき、やっぱりせっかく持ってきたのだからとお施主様にブーケを手渡すと「わあーお花大好きです!ありがとうございます!」と本当にうれしそうに言ってもらえて、ぐるぐるしていた気持ちが吹っ飛びました。



この日、美佐子さんが私を見送りながら


「よいサイトを作ってくださいね。わたし、すごく楽しみに期待してるんです。」


と言ってくださいました。この言葉をひとつのお守りにして、今後ともプラナビ を頑張って良いものにしていけたらと気持ちを新たにできた、とても素敵なオープンハウスでした。



少しいたずらっぽく、チャーミングな美佐子さんの声。


ミモザの花を手に笑ったお施主さまのうれしそうな声。



ヒトはいつだって誰かに助けられて、頑張っていけるんだな。


まだ風の冷たい冬の空気だったけれど、私はこの日、極上の見えないカーデガンをふわりと肩にかけてもらったような気がしています。



-カーデガンの家-

オープンハウスで出逢ったもの




プラナビ編集部 森本


建築家に依頼する家づくり 総合情報サイト  



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